都市を席巻する空地に向けての小さな提案
都市・街並みが歯抜け状態になり、近年大きな都市問題になっている。
美術館が独立した建築物だという発想ではなく、通り全体が美術館だということ、美術館が都市の一部という発想が都市を再生させる。
都市とアートは分断されない。コインパーキングではなく、コインアートスペースの出現。それは美術館の概念を一変させ、都市の様相を一変させる。
コインアートスペースの背景と現状レポート (2012年10月)
最近、都市を席捲しているコインアートスペースの出現について、調査したところ、次のような背景があることがわかった。現状に対する街の声とともに報告する。
2009年新内閣により、空地化した土地に向けての、固定資産税の課し方が変わった。政府の指定したアートスペースとした土地に関しては、固定資産税を課さないという新税が発足した。
アートスペースは、単にアートのスペースとすればよく、屋外、屋内を問わない。固定展示、企画展示、音楽・劇場、貸ギャラリー等、形態を問わない。スペースの広さにより、来訪者は100円~800円のコインを入れて、スペースに入ることができる。収入の10%は税金となるが、他は土地所有者の収入になるという。
土地の所有者は税金をのがれるため、かなりの応募が殺到した。アート、文化に貢献しているという意識もこれに拍車をかけているようである。
街の人々は、この事態を、好意的に受け入れている。待合の場所に使ったり、昼休憩、昼食+アートの場として利用している人もいる。アートスペースの前に、1本の樹木を植えるというルールも好評で、街が憩いの場となることも、好まれている一因と思われる。
最近まで、空地化の最先端として、将来の都市像に、不安がもたれていた広島県の呉市でも、空地が多いだけに、都市の美術館化が、急速に進んだ。アートの街「呉」の評判は定着し、呉を訪れる人々も圧倒的に増え、今や観光地化している状態である。逆に、市の美術館が、空地化するのでは、という不安声も、街の人々からは聞こえてきている。
アートスペースの発想のすばらしいところは、地域社会に密着している、という点である。劇場や音楽や絵画の芸術文化が、新しい地域コミュニティを形成しつつある。