未来の建築 ― 見えないものをデザインする

その1、対象

建築の設計監理で時間を費やす場面、苦労したり、腕を発揮する場面は「物」の納まり、見え方の 美しさに関する事柄が実際には多大だったりする。テレビ番組のビフォーアフターで披露される匠技が我々から見ると、支葉末節でもっと大切な部分がおざなりになっていると感じられるように、目に見えないものをデザインする心を手得すれば今の苦労も、くだらないものに見えてくるかもしれない。そんな期待を込めて、未来の建築を考えていきたい。

今私達が計画している手法は、場所と機能の要求を分析し、空間の構成を考える、プログラムに応じて空間を分析したり、またそれを連続させたりするという手法であろう。その流れの中で、空間の形式といった風なものが見つかればヒットしたという感覚である。あとは、その形式にふさわしい物の表現に邁進するのみである。プログラムそのものを新しく提案したり、空間の構成の手法そのものに新しい提案がされたりすることに新鮮さを覚えるが、それらは共に空間の紡ぎ方の手法や形式ではない。それ以前のこと、又は、それ以後の事柄に属している。ここでは見えないもののデザイン、空間の紡ぎ方そのものを考えていきたい。

見えないもののデザイン手法をいきなり提案することはできないが、逆に、その手法をもってして得られる空間のようなものはイメージ可能かもしれない。思いつくままにそんなイメージを列挙してみよう。

  • 空間に光の分布を与えよう ― 見えないものの対象の1つは光である。均一な空間でなく、光の分をデザインする
  • 光の質を与えよう ― 照明ではなく測れない光の質を考えて、デザインの対象としよう
  • 風の動きをデザインしよう ― 大型ガラスの視覚的連続性は、空気の流れの連続性を絶ちきってしまう。空気の連続性を考える
  • 空間にふくらみをもたせよう ― 構造優先の空間構成は一律な空間をつくりがちである。空間に、くびれ、ふくらみをもたせ空間を活きいきさせる必要がある
  • 空間と空間に距離感をつくろう ― ユニバーサルのワンルームシステムではなく、こちらの空間とあちらの空間は距離感をもってデザインされる
  • 空間に質を与えよう ― 空間のボリウム、空間を囲む材質によって空間の質は変化する。はっきりと空間の質を意識した空間デザインとしよう
  • 空間に時間を刻ませよう ― 朝昼夜、春夏秋冬、変化する空間をデザインしよう

場所と人に向けて、目に見えない空間がデザインされ、それにプログラムが割り当てられる。更に、ふさわしい空間の構成が提案される。これまでの計画と順序を少し入れ替えただけの事かもしれないし、たかがされど、結果は大きな違いを生み出すかもしれない。

その2、イメージ

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