東平塚のアトリエについて

ここに掲載した文章は鯉城 No.74 1999.10 (頁10-11)に掲載した文章です。


建築は、もっと簡単に、できないものだろうかという思いが、建築を始めてからずっと心のどこかにあります。
理論や夢を技術や空間で実現させる事が、建築ということだと思います。そのことと矛盾することなく(シンプルという概念ではなく)単純に簡単につくることが、この建物のテーマとなっています。

「簡単に」では、ちょっと気がひけたので「イージーテックでいこう」をかけ言葉に設計を進めました。

敷地は、東に京橋川をのぞみ、南は道路を挟んで3層の住宅群が並んでいます。5層にわたり壁と開口を交互に配し、東に眺望、南から採光を求めました。

内部は、中央に階段と設備コアを設け、ところどころの床を省略することによって、各層と内外空間が、様々に連続します。

単純な全体構成に加え、各部分でも出来るだけ簡単な納まりとしています。サッシュは、コンクリートに、H型鋼をアンカーボルトで固定し、ガラスをコーキング止めしています。引戸は、上下にレールをビス止めし、建具をはめ込むだけの納まりです。
手摺や階段も、打ち上がったコンクリートにアンカーボルトで固定しています。壁・天井は打放し、床もコンクリート直押えとし、屋根も直押えのみとしています。

イージーテックな納まりによって、建築全体が、カラッと乾いた印象のものに出来上がりました。
建築がどんどん高性能、高品質になっていくことにもちろん異論はありませんが、イージーテックでつくられることの楽しさ、魅力も建築の大切な部分のような気がしてなりません。

できあがって、9ヶ月になりますが、駐車場に植えた4本のエゴノキやエントランスに設けた水槽の金魚等が、近隣の子供達に好評で、このアトリエも少しづつ、この場所に定着しつつあることを実感しています。

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