場所と機能がつくる空間構成
建築を考えるとき「どこに・なにを・どのように(場所・機能・構成)」という言葉を繰り返して、設計の作業を進めている。
外部環境とどのような関係をもつ建築にするかは、その場所性の把握いかんによっていると思う。
また、建築の中で体験される行為の全体を考えると、各室の性能の確保とその連結という作業だけでなく、各空間をどういう関係で連続させるかが、より重要ではないかと思われる。
機能は、内部空間相互の関係性によってできるものだと考える。
そして、場所と機能から要求される関係を、どのように空間的、構造的に構成するかに、建築の可能性の多くが含まれているのはないかと思っている。
計画地は、東に川、南に道路と、恵まれた環境にある。
川の景観をできるだけ生かすために、南面は採光のみとし、東面に開放的な構成をとった。
内部は1,2,3階がアトリエ、4,5階が住居として、それぞれが連続した空間であるが、さまざまな利用方法に対応できるように、簡易的な仕切りを設けることによって、個別的にも利用できるようにしてある。
壁と開口を単純に配置して生まれるスペースを内部や外部、吹き抜けとする構成によって、どこからも川の景観が楽しめ、相互に連続した空間が体験できる建築となっている。
建築の表現は、構造・空間・光や形・材料・色などで表現されるが、ここでは、空間や景観のつながり、全体の構成を明瞭にするため材料や色はできるかぎり限定した表現としている。
壁はコンクリート、床・天井もコンクリートまたは、フレキシブルボードとし、開口部は亜鉛メッキのH鋼を規則正しく並べ、ひとつひとつの開口が意識されない表現としている。
空間と光が複雑に詰め込まれた単純な箱が完成したのではと思っている。
1998.11
広島県広島市
RC造 地上5階建て 379㎡