宇品の家

南側外観全景

2つの棟と中庭でつくる、変化に富んだ住宅

夫婦ふたりのための住宅であるが、3人の子供たちの家族も寄り集まることができるようにと建て替えられた。そのため、駐車場も普段は2台だが、5台まで駐車可能とすること、LDKも日常はふたりだが、10人余りが寄り集えるものとすること、が求められた。周辺は落ち着いた雰囲気の住宅地で、建て替えということもあり、ボリューム的に周辺と違和感のないものとする必要性が感じられた。

建築は、駐車場とテラスのある棟と、3層の住宅棟によって構成されている。道路側の駐車場、テラスの棟は階高を低く押さえ、半透明ガラスを多用することによって、街並みとの連続感を確保している。駐車スペース奥の半透明建具は、開閉することによって、2台から5台の駐車を可能としている。

住居棟の中心的スペースは2階である。多人数が寄り集まったときには、屋内外での生活が展開される。1階は、宿泊、仏事等のためのスペース。2室、または広い1室として利用できる和室である。3階は、夫婦の寝室スペースであるが、この階だけで生活が完結できるように設備が用意されている。住居棟内部では、各室、各階に連続性を与えながらも独立性を保ち、各室の暖房効率を損なわない工夫を行っている。具体的には、中央の階段や各室の欄間にはガラスを多用して視界の連続性を図り、また、中庭に面する1・2階の吹き抜けに向けては、太鼓張りの障子を設けて断熱性を高めていること等である。

中庭は駐車台数の確保が第一の条件であるため、砂利敷きと4本の高木だけの単純な構成であるが、1階のアプローチ、和室広縁からの眺め、2階のLDK、ブリッジ、テラスからの眺め、3階のテラスからの眺めは、それぞれ変化に富み、立体的に体験できる庭となった。桂の木は紅葉も美しく、四季を通じて楽しめる住まいとなったのではなかいかと思っている。

住宅特集2002年9月号掲載より

2001.12.
広島県広島市
RC造 地上3階建て 276㎡

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