宮の町タウンハウス

南側外観

単純なルールで構成する多様な空間

計画地は、広島市内の東部に位置し、畑が宅地化された住宅地の中にある。東西に細長い敷地は、タウンハウスを配するには無理のない形状で、計画は、各戸に2台の駐車スペースを取りながら住戸を連続させた、単純な構成の長屋形式のタウンハウスである。

住空間の構成は、まず経済性を考慮して、1,2階に水回りを集約して確保、残された空間は、中央に設けた階段によって、南北1,2階の4つの空間に分節化されている。この4つのスペースに、さまざまなレベルの閉鎖度を与えることによって、1人でも多人数でも、多様に使い分けることのできる空間を構成し、入居者が不確定という賃貸住宅の特殊性に答えている。

建物外観は、住空間全体のプライバシーを確保するため、南面は開口部を最小限にとどめて表情を抑え、エントランスの庇、手すり、植樹を強調して、街並みを構成している。

仕上げは、内部はクロス、外部はガルバリウム鋼板を主な仕上げ材としているが、内部では設備コアをシナベニヤで囲い、界壁面は色彩を使用して、内部の空間構成を明瞭にしている。外部では、エントランス部分に色を用いて、各戸の独立性を強調している。赤のエントランスの室内では、ほかよりも多くの色と形態を使用して、空間構成をより明確に表現する試みを行っている。

住宅の設計は、生活を限定するのではなくて、より自由な住まい方の可能性をつくるものでありたいと思うが、賃貸住宅ではなおさらである。水回り等の限定される部分以外の空間を、できるだけ単純なルール(今回では異なる閉鎖度のスペースを用意すること)で構成することによって、さまざまな住まい方の可能性が生じるのではないかと考えて設計したタウンハウスである。7軒は同じ空間構成であるが、入居者によって、それぞれの多様な生活空間が展開することを願っている。

住宅特集1994年8月号掲載より

1994.03
広島県安芸郡
木造 地上2階建て 555㎡

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