矩形に切り取られた空と地面
計画地は人口急増のニュータウンにある。山地を切り開いた団地は、急速に新築の戸建て住宅で埋まりつつある。
晴れた青空のもと、敷地調査に行った所員と住宅地開発の単調さを嘆いて、少々皮肉まじりに「生かすべきは、空と地面だけか・・・」とつぶやいたのが計画の出発となった。そして矩形に切り取られた空と地面を囲んで、いつもそれが意識されながら生活できる家を考えた。
平面は、大人ひとりの個室空間の大きさとして決定された、3,185mmのモジュールによるグリッドで構成されたコの字型である。3,185mm角の個室が規則的に並び、それぞれに、その半分の面積の中2階スペースが与えられ連続している。
その他の部分は、リビング、ダイニング、廊下、和室などのフレキシブルなスペースとして残されている。3,185mm角の各スペースは、折れ戸などによってパブリックスペースに開放され、空と地面の中庭に続く。閉鎖された場合には、やはり規則正しく配されたトップライトを通じて、空と通じる仕組みである。
断面的には、天井高約3,800mmのパブリックスペース、天井高2,100mmの個室スペース、天井高1,400mmの中2階スペースからなり、それぞれの場所からはさまざまな視覚的、体験的な変化が得られるようにした。
外周は、無表情な金属板とし、中庭に面する外壁材のみ着色を施している。
中庭に面する開口は、内法を1,600mmと抑えることによって視界を制限し、地面を強調し、開口部上端よりパラペット天までの壁面は大きく残して、空の切り取りを明確に表現している。
構造は木造軸組構造であるが、コの字型の外周は大壁としてペイント。内部グリッドは、ベニヤ壁、ベニヤ間仕切りの真壁構造として、全体と個の表現としている。
はじめて敷地を見た日のように、白い壁で囲まれた矩形の空と、石灰岩の砂利の敷き詰められた矩形の中庭に映される光と影が、家の存在を主張している。
住宅特集1995年3月号掲載より
1994.03.
広島県東広島市
木造 地上2階建て 160㎡