そらビル

そらビル 西面外観

どこからでも空の見えるクリニック

計画地は駅前から広島大学を結ぶ大きな通り沿い。市街化調整区域内で、周囲はまだ開発されてなく田園風景。地形は変形三角地で大通りより5m近く低い位置にある。周囲に建物が少ないことから、方向性のない建物形態とすること、敷地レベルと、道路レベルの二方向からアプローチできるようにすることが最初にイメージされた。

診療科目は精神科・心療内科・内科で痴呆老人のデイケアもある施設である。一般の診療所と比較して患者さんの滞在時間が長く、周囲から多少のプライバシーが求められる。また、ここでの生活のため、手洗いやキッチン、さまざまの収納が、随所に必要である。

生活の場として、明るく、伸び伸びとした空間としながらも、必要条件を満たす解決法を探すことがこの設計の重要課題だと考えた。外周壁に厚みをもたせ、その中にさまざまな設備(給湯器・エアコン・流し・冷蔵庫・手洗いなど)や収納(書類・衣類・食器・遊具・文具など)を納めた。その厚い壁の上には大きめの欄間を設け通風・採光の開口部としている。

この方法をとることによって、楕円の壁に包まれた空間はどこも明るく、空を見ることができるし、プライバシーも保たれた空間とすることができている。収納や設備が内部に出てこないので中央の階段によって、平面的にも断面的にも連続感のある伸び伸びとした空間がつくられている。広島では比較的寒冷なこの地にあっては、厚い壁は断熱の効果も果たしている。楕円の南面は切り取られ、景色を望むテラスにつながって、各階とも、開放的な外部をもっている。楕円の厚い壁におおらかに包まれた空間は、明るい光に満たされ、伸び伸びと開放的な空間になったのではないかと思っている。

医院建築 No.22より

2001.05
広島県東広島市
S造 地上4階建て 822㎡

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