2枚の壁と3枚のスラブによる縦横に連続した空間
敷地は、市街化が進み、徐々に三階の建物が増えてきている住宅街に在る。南向きの敷地だがプライバシーの観点から南向きに大きな開口をとることは難しい。
小さな敷地に四人の家族が、のびのびと生活できる空間を、いかにローコストにつくるかがテーマであった。
計画当初より、二枚の壁に架け渡された何枚かのスラブで構成された空間に展開する生活がイメージされた。どのようにスラブを配置し、それぞれのスラブにどのような機能を配するかの検討を重ねた。
敷地の端から端まで、一階の床から最上階の天井まで見渡せる空間とすること、プライバシーを確保すること、それぞれの場所を落ち着いた居心地の良い空間とすること等に配慮しながら計画を固めていった。
スラブ間の天井高は1.8Mから最大6.2Mまで様々で、横長縦長、変化のある空間がつくられ、敷地南北には採光上の空地を残して、工事現場用のネットによって視界上の境界をつくっている。
スラブによって切り取られた空間は、縦横に連続し、敷地上の空間全体を生活の場とすることに成功したのではないかと思っている。
ローコスト化を図るために、コンクリート工事以外の工事種目を出来るだけ減らし、仕切りは、コンクリートとは対照的に軽い障子とした。結果的に、栗の木のフローリングを張ったスラブが強調され、落ち着きのある場所をつくっている。
隣地境界の二枚の壁は、スリ上げ型枠の工法をとっており、壁面には、縦横300ピッチのパイプ跡が残されている。アクリルや木製の丸棒を差し込むことで、フックや棚がどこにでも自由に作れることから、住まいは、生活感に満ちた、楽しげな空間となっている。
住宅特集2005年5月号掲載より
2004.03.
広島県広島市
RC造 地上3階建て 119㎡