関係性・意思・公共性

ここに掲載した文章はInter Arch Exhibition’96に向けて執筆した文章です。


関係性


機能主義とは関係主義のことであるという文章を目にしてハッと目が覚めた気がした。
機能そのものの向上に目を向けるのみではなくて、機能と機能をどう関係づけるかが我々にとって、
もっと大切な課題であることに今さらながら気づかされた。
建築という行為が対象とするものは、物であり、空間であり、生活であり、行為であり、多面的で限りがない。
「関係性」という概念は、それらを整理して考えるのに実に好都合な言葉のように思われる。
建築とは、関係をつくることだと言いかえることも可能である。

意志

建築は関係性をつくる行為である。どういう関係にするかは、創り手の意志である。
形態を構成する時以上に関係性を決定する時こそ創り手の意志は試される。「絶対性」が消え去ると同時に意志も、見えにくくなっている。相対の時代だからこそ創り手の意志が必要なのではないだろうか。
都市は建築によってつくられ、建築は都市によって生かされる。2つを関係づけるものは創り手の意志に他ならない。どのような意志をもって、この建築はつくられたのか、という問いに対して我々は回答を用意しておかなければならない。

公共性

都市が自由な公共性を持つのと同様に、集合住宅、オフィスビル、公共建築など建築も皆、都市的な公共の場を持つ。
それらのスペースが、都市と強く結びつき連続していれば、都市は多様性を増し、都市性は高まる。高層化した建築も街路の延長として、都市空間と連続させれば、都市は立体化し、高密なものとなる。
公共のヴォリュームに比して、私有のスペースは実に極小なものである。私有に拘泥されず、公共のために創ることが、結果的に「私」を豊かにするという逆説が成立しないだろうか。

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