入籠状態の内部空間と外部空間でつくる別荘
南面道路、南斜面の別荘地である。別荘地としては敷地はそれほど広くはなく、周囲に他の別荘も迫っている。このような敷地条件から、建築はコンパクトにまとめられたボックス状の形態がイメージされた。
敷地の内外には、アカマツやスギが林立しており、内部と外部をさまざまな関係で連続させることを計画のテーマとした。また内部では、昼間はあまり利用されないであろうベッドルーム的なスペースを、全体とどう関係させるかを主題とした。
空間は、「半入籠」の構成をとっている。約6×6×6mの主空間に、ベッドルーム等の空間が入籠の状態でセットされるが、この空間の半分は外部に突き出されている。さらに主空間からは、設備スペースやテラスのスペースが突き出され、居間を中心とした入籠状態の内部空間と、外部に向けて放射状に伸びる空間によって、内外のさまざまな関係をつくっている。
基礎は湿気と雨水に対する配慮から、3つのボックスとし、天井高のとれる部分は、倉庫および機械室としている。床下の空間は、夏の涼み場所、薪置場として利用される。居間スペースは、薪ストーブとシーリングファンによる暖房を効果的に働かせている。
ふたつのベッドルームは、空間的には主空間の一部であるが、ひとつはロールスクリーンによって個室化され、もうひとつは手摺によってプライバシーを保っている。
水回りおよびキッチンは、主空間が木の空間であるのに対し、白い塗装を施したスペースである。浴室は乳白のガラスによって、外部を取り込んだ空間としている。 これまで住宅の計画に対し、家族の構造の具体化として、「入籠」の空間構成を多用してきたが、今回、外部環境との関係をより強く意識して、「半入籠」の空間を具体化することができた。単純であるが、豊かな空間体験の場ができたのではないかと思っている。
住宅特集2000年5月号掲載より
1999.10.
広島県佐伯郡
木造+RC造 地上2階 地下1階 96㎡