宮の町の家

東側庭よりテラスを見る

2層の空間全体を生活の中で感じられる家

計画地は、南西角地で、周辺の家並みの中ではかなりゆったりとした敷地である。敷地内にはすでに両親の住まいが建っており、古い家屋と庭を解体し、息子さん家族の住まいをつくる計画である。

依頼主からの要求は、法事のスペースを確保すること、家族4人がお互いに気配を感じられる明るい家とすることなどであった。

前面道路は交通量が多く、周囲の景観も期待できないことから、居室棟とガレージ棟、既存建物に囲われたコートハウス的な配置をとっている。

東西に長く伸びた2層の空間全体を、生活の中でいかに感じられるようにするかが、この計画のテーマである。居室棟を縦断するようにして配されたトップライトと吹抜けによって、その解決を試みている。2枚の布を糸で縫うようにして、細長い2層の空間は一体として感じられる空間になり得たのではないかと思っている。

居室南面の庭は、以前の庭石などを利用して、それぞれに特徴をつけ、リビングに連続するデッキテラスは2世帯住宅の共同リビングとして活用されている。

ダイニングは、2階寝室のガラステーブル越しにトップライトの光が落ち、小さなサンドコートと一体となって、落ち着いた空間となっている。階段を挟んで連続するリビングは、吹抜けを介して子供室の気配が感じられ、不足で出られる屋根付きのテラスに連続する。書斎、吹抜け空間は、和室の前庭と共に、家族の住居部分とその他の部分を分節化する空間となっている。1,2階とも建具は、枠なしの引き戸となっており、建具を開放すると東端から西端までを見通すことができる。

生活の中で、家の全体が感じられ、しかも、さまざまなシーンが展開される住まいができたのではないかと思っている。

住宅特集1999年1月号掲載より

1998.08.
広島県安芸郡
RC造一部S造造 地上2階建て 332㎡

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