みくまりの家

外観

ローコストでも楽しく住める家

敷地は広島市の東方、見晴らしのよい高台に決まった。立ち並ぶ建売り住宅の南端に位置し、東は1階からも山々が望め、2階からは南に広島市の夜景が少しばかり眺められる。

敷地の狭さは周辺の開放感で十分補うことができる。住宅群の端に位置するという認識、道路より3m高い敷地に建つ建物であること、東と南を望める立地であることが、建物の形態の決定に大きく作用している。

立ち並ぶ住宅群の端に位置する建物として、連続性を締めくくるような形態、堀車庫と建物を一体化して、上へとそびえ建つような外観を選んだ。平面計画は眺望の関係からLDKと水回り、主寝室のある1階は東西を軸に構成し、子供室の2階は見晴らしバルコニーによって南北の軸を加え、垂直にはトップライトとその開閉用タラップで上昇感を表現している。

地下は鉄筋コンクリート造、1階は鉄骨造で、四周はコンクリートブロックで囲う。2階はコルゲートパイプに発泡ウレタン吹付け、がらんどうができてから、木軸で間仕切りと2階の床をつくる。ひとつの空間の中で家族が住まうイメージを、RC造・鉄骨造・組積造・木造の混構造で具体化した。心配していたコルゲートパイプの屋根は、断熱が十分効いていて予想以上に冬暖かく夏涼しい室内を提供している。

ローコストでも、暖か味があり楽しく住める住まいを、というのが施主の希望であった。予算上、切り捨てられやすい部分にあえてこだわることによって施主の希望に応えた。居間の吹き抜け、暖炉、トップライト、造付けベンチ、バーベキューテラス、見晴らしバルコニー、植栽等がそれである。檜の床の上に寝ころんで、吹抜けを見上げていると、多少、施主の希望に応えられる空間になり得たように思われる。

最も安い暖炉ができたのではないかと思っている。煙道はブロック積み。積む途中で、うちわ状の鉄板を入れてダンパーとしている。前面開口のまぐさはアングルで、そのまま煙返しとなっている。値段に関係なく気持ちよく燃えてくれている。郵便受けは、オイル缶製、大型の郵便物も簡単に飲み込んでくれ、好評である。

住宅特集1987年 9月号より

1986.09.
広島県安芸郡
S造 地下1階 地上2階建て 96㎡

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