己斐中の家

北東面外観(夜景)

宙に浮いた空間に新たな住宅をつくる

建築の設計をするとき、いつも3つのキーワードを頭の中でくり返し念じながら計画をしています。

「素直・大胆・新鮮」
素直に思ったことを、大胆に表現すると、新鮮な空間ができると考えています。

「どこに(場所)・なにを(機能)・どのように(構成)」
場所の特徴、良い所、悪い所を読み取り、建物のもっとも大切な目的を考え、それを実現できる空間の構成を考えるのが設計だと思っています。

「単純・簡単・素朴」
建築は単純な材料で、簡単に造られ、素朴にできあがったものが良い建築なのではないかと思っています。

敷地は、3方が住宅に囲まれ、北側の道路も広くありません。1階に生活空間を配置することは諦め、主な生活空間は2、3階としましたコンクリートの箱の上に、鉄骨の箱を載せ、生活空間が空中に浮かんでいるような構成としました。

道路からコンクリートの箱までの5.2mは柱もない開放的なスペースとなっており、視線が抜け、街並みを明るくしています。更に3.6m奥には半透明ガラスと木製の玄関扉が来客を迎えます。

2階の外壁材は酸化鉄とセメントによるリサイクル自然素材です。セメントによる白華も抑えず、季節や風雨とともに風合いは変化し、時間を刻みます。コンクリート打放しとともに、自己主張の少ない素材を使いながら、大胆な構成の現代的で個性的な住宅ですが、塀のない、開放的な街並みに貢献するとともに、落ち着いた景観の形成に貢献しています。

家型をした箱の内部には、2つの箱と1枚の壁を入れて空間を構成しています。1つは桐の合板の箱。もう1つの箱は黒色のスレートで表面を覆い、全体的に落ち着いた空間としています。2つの箱の余白がリビング、ダイニング、階段や廊下などのパブリックなスペースです。一枚の壁がそのパブリックな部分から、プライベートな部分である寝室や3階の個室を隔てています。様々な方向に設けられた縦長の窓から光や風が入ります。

最近気になって、頭の中でくり返している3つのキーワードがもう1つあります。

「心・頭・手」
やさしい思いで合理的に解決し、上手く設計したいという思いです。
心静かに、のびのびと生活できる素朴で新鮮な空間となったのではないかと思っています。

2018.10
広島県広島市
RC造+S造 地上3階建て 184㎡

[ ] TECTURE MAGに掲載していただきました

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