北迫の家

南側外観全景

建築が主役ではなく、自然と生活が主役の住宅

敷地は南面する小高い丘の上にある。配置計画は、建物を敷地の南端に配し、南面に眺望、北面に庭を眺める構成を取っている。堅牢で飽きのこない住まいをという依頼主の要望に対応して、建物は単純な壁式の構造体を打放しで表現し、諸室の機能を満足させるための2次的な、壁、扉、収納等はすべて板材で表現することで、構造と空間の構成を明快にすると共に、内部空間に軽快な秩序を与えている。

内部機能の構成は、西側のブロックに水回り、収納等のサービス諸機能を納め、建物中央の動線部分を空に向けて開放し、この軸を背骨として、南北に伸びる壁の間の空間に2階は寝室群、1階はLDK等の諸機能を配している。

単純な構成ながら、南面に向けては街並みの眺望、中央東西軸からは空、北面からは庭へ向けての連続感が得られ、スクリーンに映画が映し出されるように、住まいに自然の変化が映し出される。

北庭はガレージの屋根に連続し、広がりのあるコートヤードの形態をなしており、防火水槽を思わせる池、焼却炉、解体された家屋の踏み石によるテラス、生家の庭から移植された樹木等、火、水、石、緑等によって素朴で楽しみのある屋外の室を形成している。

建築が主役ではなく、自然と生活が主役の物語が映し出される建築を願って設計した住まいである。

住宅特集1994年5月号掲載より

1993.09.
広島県呉市
RC造 地上2階建て 299㎡

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