レベル差でつくる立体的につながる空間
敷地は狭小道路に南面しており、隣家が近接して建っている。
建主はキッチン中心の水回りを重視した生活、友人を招いての談笑の生活風景を新しい家に期待していた。
このような条件からイメージしたことは、水回りや寝室、客室もリビングやダイニングと等価に存在し、内、外、諸室がいろんな場所にあり、それらの総体として生活空間が存在する住まいであること。また、周囲の景観は目に入らず、プライバシーの高い全体を保ちながらも、周辺に向けて、閉鎖的な空間にはならないことであった。
空間を実現するため、いくつかルールを設定した。「階」と感じられない程度のレベル差の連続で全体を構成すること。敷地上の空間を立体的に回遊できる構成とすること。どの場所にいても各場所の隅々にまで視線が届くことなどである。
このようなルールを前提に、ランドスケープを計画するように敷地上にさまざまな場所をつくっていった。張り出した個室の下をアプローチして玄関、少し上がってダイニング、さらに高いレベルにリビング。リビングは両面が庭に面し、庭に出て芝生を登っていくと駐車場上のデッキ。庭、デッキのフェンスはわずかに透過性があり、周辺の景観をカットすると共に敷地全体を空間化している。デッキは子供室につながり、一段上の主寝室のレベルにつながる。
このように各空間がつながり合うことで立体的な回遊を生み出した。
住宅特集2009年7号掲載より抜粋
2007.11.
広島県広島市
RC造+S造 地上2階建て 135㎡