「住宅」ビルディングタイプの再編

ここに掲載した文章はJIA NEWS 1996 6 (頁9-10)に掲載した文章です。


人の行為を分析して、幾つかの行為の集合に整理する。
それぞれの行為に対して、空間を用意し室名が与えられ、動線によってお互いを関連づける。建築の一般的な計画手法はこのようなものだと考えられます。3LDKも、このようにして生まれてきた空間の構成だと思われます。3LDKをどう再構成するかという問題は、もちろん大切ですが、現在の閉塞状態を切り開いていくには、室名が与えられる以前に遡って、再考することも必要と思われます。
細かく細分化された行為をどのように区分するか、どこまでを1つの空間で包むかは、小さな住まいでは空間の構成を決定的に左右します。

ここに挙げた2つの計画では、個室が受け持っている意味合いを分解し、
個室というくくりよりも家族というくくりにウェイトを置いて計画したものです。

PLAN1

1つは、まさに80㎡ほどの3LDKに相当する住まい。プライバシーの確保されたベッドルーム以外の行為は家族室的な全体の空間構成の中に散在しています。

もう1つの計画はビルのオーナー住居で比較的大きな住居ですが、同じようなコンセプトで構成されています。私物の収納が個室に含まれていること、個室の範囲が建具によって拡張可能なこと、5LDKが4LDKにも3LDKにも可変なことなどが、広さのゆえに可能になっています。

2つの案とも、家族の中における個人の領域を考え直すことによって、新しい3LDKを構成しようとしたものです。
センターコア的な空間構成により、四周の壁がいつも全体を意識させます。個人と家族、1つの家族像が空間を構成しています。

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