建築数人会展2001「住宅/NEXT」

ここに掲載した文章は建築数人会2001展「住宅/NEXT」に向けて執筆した文章です。


仮説1 住宅は仮説である。

住宅は、家族・生活・行為の器である。
物理的実体のないものの器であるが故に、住宅は完全に抽象的な思考の産物である。
仮説と仮説を綱渡りのように辿っていった延長上に、どのような住宅像が浮かび上がるか?

実体のあるものをいれる鞄や瓶とは異なり、住宅では家族像や生活イメージが形態をつくっていく。

仮説2 住まいは、ハードとソフトの織りなす綾である。

ハード・・・・・材料、工法、構造、風、気温、光、機能(浴室、トイレ、キッチンetc.)
科学、経済学、工学

ソフト ・・・・・家族、社会、個人、エコロジィ、環境、情報、ライフスタイル、美
社会学、心理学、芸術学

住宅は、これらすべてを包括したものであるが、何かを特化することで、
新しい住宅像が描きうるかもしれない。

仮説3 ハード優先の住まいは、単純・簡単・素朴な家である。

単純・・・・・構造優先の単純な構成

簡単・・・・・少数の建材によって簡単に作る

素朴・・・・・構造と素材がつくる素朴な空間

時代や社会の変化によって、変化しやすいソフトの面を対象とせず、ハードが決定する住宅像である。

仮説4 室内環境の解決から生まれる住まいは、ダブルスキンの家である。

日本の民家はハードの解決であった。
屋根・庇・縁・廊下は環境調整装置である。
その現代的解決は、ダブルスキンの家である。

ハードの要素のうち、雨・風・光等に対する室内環境の保持をテーマとしたとき、一つの解決が生まれる。

仮説5 ソフトを考慮しない住まいは、機能が並列された家である。
・・・・・スーパーフラットファンクションハウス

“間取り”は、ソフトの解決の結果として生まれるが、ソフトを意識せず、機能にだけ注目すると、
機能と機能の関係は消失する。

仮説6 単純・簡単・素朴、ダブルスキン、スーパーフラットファンクション
一つの解決・・・・・バルーンハウス

これまでの仮説の延長上に浮かび上がる一つの解決。増減自在、使わない時はコンパクトに収納できるのも楽しい。

仮説7 単純・簡単・素朴、ダブルスキン、スーパーフラットファンクションの家の立体的解決・・・・・住宅/NEXT

敷地を与えられ、現実化、立体化した場合の一つの解決。床や外壁の設置・撤去により
様々な変化に富む内外の空間が発生する。

仮説8 住宅は小さな都市、都市は大きな住宅である

仮説による住まいの構築と同じように、都市に向けても、新たな都市像を描き続けることが大切ではないだろうか。

仮説9 住宅は意志である。

住宅は仮説から導き出される結果にちがいないと思うが、仮説自体は“意志”そのものである。
今、住宅は混迷の時代と言われるが、言い換えれば、それぞれの住宅に意志が見えてこないということではないか。
住宅は意志を持たなければならない。

何が混迷しているのかと問い直したとき、色々な価値観が混在しているのではなく、価値観そのものの不在に気が付く。
意志こそが次の時代を切り開く。

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